懲戒処分と退職金

 

退職金制度がある会社の場合、懲戒処分をするときに退職金を不支給にして良いかが問題となることがあります。

一般的には就業規則で

「論旨解雇や懲戒解雇の場合には、退職金を一部不支給か全額不支給とすることがある」

というような規定としていると思います。

しかしこのような規定があったとしてもその法的有効性はまた別問題です。

 

  • 論旨解雇・懲戒解雇の規定が有効かわからない
  • まずその論旨解雇や懲戒解雇が有効かわからない
  • その論旨解雇や懲戒解雇の事由によって退職金を一部不支給または全額不支給とすることが有効かどうかわからない

 

といったような点での法的な判断が明確ではないからです。

「就業規則に規定しているから」というような理由だけで強引に退職金の不支給に走るのは無用なトラブルを誘発することがあります。

というのも退職金はもともと退職時のものであり、退職すれば会社に対してもはや気兼ねはありません。

しがらみなく会社に請求やトラブルを持ちかけることができるわけです。

懲戒解雇は法的に有効となりにくい

 

判例に見る懲戒時の退職金の判断

 

有名な判例があります。

 

名古屋地裁 橋本運輸事件 昭47.4.28

「懲戒解雇による退職金の全額不支給には、労働者に永年の勤続の功を抹殺してしまうほどの不信があったことを要する」

 

懲戒解雇時などの退職金の不支給についてはこの「永年の勤続の功を抹殺するほどの不信」があったかどうかで判断されています。

他の判例においては

 

平15.5.6 東京貨物社事件 東京地裁

  • 在職中の競合行為は永年の勤続の功を抹殺するほどの行為ではないとして、退職金の45%減額しか認められない。

平9.4.25 日本電信電話事件 大阪地裁

  • 商品販売の責任者が会社商品を隠匿したことに対して、退職金不支給とすることは不当ではない

 

などがあります。

鉄道会社の従業員の私生活での痴漢行為では、勤務態度が真面目であったことも考慮され、退職金の3割の支給(7割は不支給)とされたりしています。

(平15.12.11 小田急電鉄事件 東京高裁)

 

退職の申出と懲戒解雇

 

懲戒解雇は従業員にとってはある種の死刑宣告でもあります。

以下を参照。

懲戒解雇は再就職に障害となる

特に退職金もある場合には、懲戒解雇を避けたいという気持ちが強くなります。

まれに懲戒解雇前に退職をしようとする従業員もいます。

退職をしてしまえば雇用契約がないので懲戒解雇はできなくなります。

退職金との兼ね合いも変わってきますので、このあたりのタイミングについては事前に検討しておかなければいけません。

詳しくは以下を参照。

退職申出後に懲戒解雇しても良いか?

 

まとめ

 

上記などの判例からしますと、私生活の行為での退職金減額は難しいといえます。

業務上の事由での懲戒解雇であり、かつ現実的に会社に無視できないような損害が生じてきているような場合しか「永年の功を抹殺する」に値しないのではないかと思います。

また全額の不支給にはどちらかといえば慎重であるようにも感じます。

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